いきなりですが、プリズレン(コソボ第二の都市。古都。わたしが暮らす町でもある)には日本のゴミ収集車があるんです。
えぇ、あのISUZUトラックが一日に何回も町中をうろうろしています。
昼間は音楽も鳴らしていますよ。
あの音楽のせいで、はじめこの日本のゴミ収集車が導入されたときは、みんなそれをゴミ収集車ではなく
「アイスクリーム販売の車」だと思ったらしいです。微笑ましいエピソードですね。
「車が音楽を流すなんて、何かを売るときの宣伝だけだろう?ゴミ収集車が音楽を流すなんて信じられなかった」と言います。
(そして確かその音楽は地元の人の作曲と聞いたような…ちょっと曖昧なのでまた確かめます)
別の機会に、「日本の洗濯機って歌うって聞いたけど、本当?」と、あるコソボ人に真顔で聞かれたこともあります。
「歌うっていうか、洗濯が始まる時や終わった時には音楽が流れるやつもあるよ」というと、爆笑されましたけど。
コソボの洗濯機はいきなり始まって知らないうちに終わっていますからねぇ。
「音楽でお知らせ」というアイディアなんて信じられないでしょうね。
トルコはモスク建立の寄付をしていたり、アメリカは要塞修復の寄付をしていたりする中で、
日本はゴミ収集車の寄付だなんて地味だなぁ、とも思うのですが、実際はかなり役に立っているようです。
そして多くの人が日本からの寄付だということを知っているのにも驚きました。
はじめ、「日本から来ました」と自己紹介すると、「あ!日本!ゴミの車ね」とか言われ、
「は??ゴミ??」となることもありました。
これはJICAの「コソボ廃棄物プロジェクト」というものだったそうです(プロジェクトは2015年に終了)。
2011年からスタートし、2012年にこのゴミ収集車33台がプリズレンに寄付されました。
4年たった今でもゴミ収集車はピカピカです。
一般の車がほとんど灰をかぶったように汚いのと比べると、その清潔さはほとんど異常といっていいレベルです。
たぶんこのゴミ収集車がプリズレンで一番きれいな車ですね。
そして、このゴミ収集車に乗ってゴミ収集する人たちがすごくフレンドリーなんです。
夜の回収のときは基本音楽は鳴らさないことになっているのですが、
バーで飲んでいる陽気な酔っ払いたちがゴミ収集車が通るときに
「音楽鳴らしてくれよ~~」と頼むと、喜んでかけてくれます。気分はゴミ収集人ではなく、すっかりDJ。
日本人がいるとわかると茶目っ気たっぷりに車から手を振ってくれますし。
数人の旅行者からも同じような体験談を聞くので、いつもそんな感じなんでしょうね。
JICAの報告などを読むと、ゴミの遺棄に対する人々の意識は向上している、みたいな感じです。
ゴミ収集車のおかげか、たしかにプリズレンでは町中にゴミが落ちているのはあまり見かけませんね。
ただ、川とか山には平気でゴミが捨ててあります。それもプラスチックとかビニール袋とか。
もうね、なんかのインスタレーションかな?って思うくらいのゴミの山です。
プリズレンを流れる川にも、たくさんゴミがどんぶらこ~と流れていますし。
ある公園で見たのは、底がないゴミ箱。
つまりそこにゴミを入れると、自動的に下に落ちる仕組みになっています。
じゃあこのゴミ箱いらないよね!?って思いました。
ゴミの分別も全くないですよ。
ビン、缶、紙、生ごみ、電池、ペットボトル…をぜーんぶまとめて同じゴミ箱に放り込んでいる光景は、
ゴミの分別が当たり前になった日本から来るとすごく違和感があります。
初めは「こんなことしていいのかしら…」と不安に感じて、思い切りゴミを捨てられませんでした。
コソボでは(少なくともプリズレンでは)、ゴミ回収してもらうためには、各家庭がそれぞれ業者にお金を払って頼むそうです。
日本のように町内にゴミを集める場所があってそこで回収してもらう、というシステムとは違うんですね。