4月17日付のBalkan Insightというオンライン新聞によると、「制御不能に陥ったあまりの観光地化により、UNESCO世界遺産登録されているバルカンのいくつかの場所が、リストから削除されてしまうかもいれない」という記事がありました。
削除を検討されているのは主に次の場所。
ドブロブニク(クロアチア)
プリトヴィッツェ湖群国立公園(クロアチア)
コトル(モンテネグロ)
オフリド(マケドニア)
おいおい!どれもバルカン旅行では欠かせない場所ばかりじゃないですか!
まぁ、だから観光客が訪れすぎて元の姿が損なわれてしまっているから削除検討、ということなんですが…。
☝オフリド湖
☝コトルの旧市街の様子
わたしも去年の夏(2016年7月=超ピーク時)にドブロブニクを訪れましたが、本当にものすごい人の数だったのを覚えています。
もとは、人口4万人の小さな町だったそうですが、今ではピーク時の多い時で一日に1万人の観光客が訪れるようになったとのこと。
そりゃ、町の様子が姿を変えてしまって当然ですよね。
実は「多くの観光客が訪れる」というのは一つの出発点にすぎず、そこから派生した「えげつない金儲け」が多くの問題を生んでいます。
例えば…
人が来るからでかい宿泊施設を作ろう。
アクセスを便利にしてもっと人を呼ぶためあんなとこやこんなとこにも道路を通そう。
そしてそれらの建設は、もとの環境に与えるダメージを無視して(行政は金が絡んでいるので、本当はダメージを算出しなければいけないのに、そこは「不正に」見て見ぬふり、もしくはもみ消しする。これはバルカン政治の王道のやり方です。指導する立場の行政なんて、業者との癒着で骨抜き。賄賂・横領何でもありのしたい放題。このシステムの中にいないとお金は回ってこない仕組みになっていますからね。そしてそのことを全員が知っている)ボコボコ歯止めなく建てられます。
世界遺産ではないですが、アルバニアの海岸沿いにも「リゾート」と称して、浜辺に異様な数のホテルやアパートが建てられています。
めっちゃ醜いですよ。
しかも、途中で建設が放り投げられてそのままになっている建物もたくさんあります。
せっかくきれいな海岸になりえたのに、目先の金儲けばかりに目が行って、結果としてかなり残念なことになっています。
外国に行く金のないアルバニア人が「予算上行けるから」という理由でそれらのビーチを訪れていますが、それ以外の、特に外国人にとっては何の魅力もない場所になっています。
これじゃあ人も呼べないし、今後観光地としても衰えていくのは目に見えていますね。残念ながら。
☝AFC… こんな醜い建物が海岸沿いに乱立している
「なんでバルカンの人は長い目で物事のメリット・デメリットを考えられないのだろう」と、この観光地化のことだけでなく、普段のやり取りの中でもよく思います。
「今までおかれてきた状況が、人々をそういう思考回路(=今さえよければそれでいい)に陥らせている」といってしまえば説明はつくし、「そうですか…」と言うしかないですが、そうやっていつまでも他人や歴史や状況のせいにし続けるか、それをやめるかは、「今まで云々」関係なしに今・自分で決められることだと思うんですがね。
なんていうと、あまりにも厳しすぎるのかな。
まぁ、世界遺産であり続けても、このような観光客の異常な混雑状況、醜い建物の建設が続けば、いずれ人は訪れなくなるだろうし、一度訪れてしまった人がリピートすることも少ないだろうから、観光地としての魅力が衰退していくのは時間の問題ですけどね。
だから問題は「観光地云々」ではなく、貴重な町や自然の状態をどのように管理・保持するか、ということです。
そういうのが理解できていないと判断されたから、UNESCOもリストから削除するよ、と警告しているわけだし。
間違ってもUNESCOを買収してどうにか話をつけよう、なんてバルカン流でことを収めようとしないことを祈るのみです。
☝コトルの旧市街の様子